本 // Tom Doak "The Confidential Guide To Golf Courses" // ゴルフコースに対する純粋で率直な批評を読みたいなら

個人的な経験を語るならば,『ゴルフコース好奇心―ANALYSIS OF A GOLF COURSE』でコース設計の基礎を知るとともにマサ・ニシジマ氏の名前を憶え,その流れで Tom Doak の名前に出くわすとともに彼が新進気鋭のゴルフコース設計家であることを知り,そしてその流れで,この『The Confidential Guide to Golf Courses』を知るにました。

これが他のゴルフコースガイドブックと圧倒的に違う点,そしてそれゆえ一読の価値があると思える点は,この本がただの「写真集」でもなければ「紹介文」を並べているだけでもなく,「よいゴルフコースとは何か」を本気で考えている人たちによる「批評」が読めるということ思うのです。Tom Doak を含む4人の共著者が,実際に自ら足を運んだことのあるコース(だけ)についてコメントをし,そして0から10までのレイティングをしている。この純粋さと熱意,そして得られるゴルフコース設計に対する知見に触れられるのは,なんともありがたいです。

以下は,この本に対するWRXのレビューです。


GolfWRX "Review: Tom Doak's Confidential Guide To Golf Courses"

http://www.golfwrx.com/268669/review-tom-doaks-confidential-guide-to-golf-courses-3/


1988年,トム・ドォークの友人たち数名は,彼が "The Confidential Guide To Golf Courses" と呼ぶ本を一瞥した。"Confidential" の文字がタイトルの中に堂々と鎮座しているものの,その友人たちはその警告は気にもとめず,そしてその研究所はいくばくかの評判を得た。

そのオリジナルの書の中で,ドォークはゴルファーたちのゲームを楽しくさせるゴルフコースにスポットライトを当て,そしてデザイン理論のクラシックな要素を提示した。ドォークはまた,設計原則の真の執行者であると彼が見なす設計者たちを特定しもした。言っておくが,このガイド本は,提灯記事などではない。
著者の言葉を借りるなら,この Confidential Guide は「 すべてのコースを自分の足で,レビューし,フリーパスを与えず,そして著名な設計家を雇うことが質の高いコースを保証するという神話を壊した」
この本はまた,ゴルフが何であって何であるのか―設計家の意図を解読した上でスキルのあるプレーヤーがプレーをすれば,地面からでも空中からでもフェアウエイとグリーンとに等しくアクセスできるゲーム―というそもそもの考えから逸脱しているコースやクリエーターを詰問している。

オリジナル Confidential Guide は,ジャック・二クラウスやトム・ファッジオ,ジョーンズ一家のような設計家からは軽蔑の目で受け止められたが,ドォークは自説を曲げることもなく,ランキングを変えることもなかった。ドォークは当時の編集者 George Peper の命令で,オリジナルの Golf Magazine ランキングシステムを始めた。Confidential Guide では,「The Doak Scale」と呼ばれる,私的なシステムが生まれた。最低点の「0」は,以下のように定義される:
あまりにうそっぽく不自然なコースで,あなたの心を汚染しかねない。どのような状況にあっても,お勧めできるコースではない。建設に当たって驚くほどの金額が費やされ,そしてきっと最初から建設されるべきではなかったコース。
最高点の「10」,ゴルフコース設計におけるナディア・コマネチの定義は,以下の通り:
ほぼ完璧。1ホールでもスキップしたら,見る価値のあるものを見逃すことになるだろう。このカテゴリーにあるすべてのコースを見ていないとしたら,ゴルフコース設計の可能性をまだ分かっていないことになる。この本を閉じて,旅行会社に電話しよう。今すぐ。
ここに至るまでに,Pete Dye や A.W. Tillinghast,Charles Blair MacDonald やその他の高名な設計家たちが行なってきたことを,トム・ドォークも行なった。バッグに荷物を積め,世界中の名コースをまわって知見を積んだ。わたしたちの多くにとって,ゴルフコースをプレーせずに歩くだけというのは想像を絶するだろう。トム・ドォークにとっては,慣れ親しんだことだった。すべてのコースをラウンドするだけの時間がなかったので,彼はしばしばウォーキングツアーを実行した。

1990年代から2000年代にかけて,ドォークのデューデリジェンスは実を結んだ。彼のファームが設計したのは,オレゴンの Bandon Dunes resort での2番目のコース(Pacific Dunes),フロリダの Streamsong Resort にある2コースのひとつ,そして ニュージーランドからスコットランド,ネブラスカの砂丘に至るまでの数多く(少なく見積もって30ほど)にのぼる。

2010年代初頭,ドォークは Confidential Guide を見直すことを決める。彼は1980年代以降多くの物事を学び,そして書くことに飢えていた。 Alister MacKenzie に関する著述とゴルフコースの設計とは,彼の過去の中でより遠くで響きあった。ドォークは3人のゴルフコース設計マニアに協力を依頼し,そして彼らは調査に出かけ,ひねりをきかせて新たな Confidential Guide を世に送り出した。


レビュー


2010年代の「the Confidential Guide to Golf Courses」は,果たしてどのようなものだろう? まず,これは全5巻のセットである。2014年9月にリリースされた第1巻は,イギリスとアイルランドのコースをカバーする。続いてはアメリカ大陸(冬),アメリカ大陸(夏),ヨーロッパ・中東およびアフリカ(EMEA),そしてアジア・オーストラリア・ニュージーランド,と続く。

第1巻は180ページ,びっしりと書き込まれた散文が連なる。ガイドするのは,4人の勇者たち(ドォーク,Golf Club Atlas ファウンダー Ran Morrissett,, Planet Golf  のファウンダー Darius Oliver,そしてマサ・ニシジマ)。この中には,Gourmet’s Choice(グルメのチョイス),Course Reviews(コース・レビュー),The Gazetteer(カテゴリー別の推奨),そして Most Wanted(著者たちのいつか行きたいコース)というユニークなセクションがある。

Gourmet's Choice


ここでは,トム・ドォークたちが友人とラウンドするときに連れて行きたい18コースを特別に取り上げている。ここにリストアップされているのは,この本の中で最高点を獲得しているコースばかりではないが,高い評価を得ているのは間違いない。これらコースは,魅惑的な設計,雰囲気,そしてしかるべき場所にしかるべき時間にしかるべき人々とともにいることの説明しがたい感動を,与えてくれる。

著者の言葉を借りれば,「私の魂を揺り動かし,尋常ならざる何かで訪れた人に報いる」。そうして選ばれたのが,アイルランドの Ballybunion,スコットランドの Old Course at St. Andrews,イングランドの Royal St. George’s,ウェールズの Pennard,北アイルランドの Royal County Down,イングランドの Mildenhall,そしてスコットランドの Askernish などだ。ドォークは,ピート・ダイに枕木バンカーを教えた Royal West Norfolk(地元の人には Brancaster として知られる)を,このように書いている:
あまりに低い位置にあるため,クラブへのエントランスの道は1日2回満潮で水浸しになる。そしてこのクラブのメンバーは,いつ出入りしていいかを知るために潮汐表を準備していなければならない。もし海面が今後50年に上昇し続けたら,Brancaster はその被害をうける最初のコースのひとつとなるだろう。
各18コースは1見開きを割かれ,ホールごとに評価を受けている。すばらしいホールには「!」マーク,世界的に見てすばらしいホールには「!!」や「!!!」,頭をかしげるホールには「?」,そして頭をかしげるホールだったが後にすばらしいホールになったものには「?!」といったマークによって。

Course Reviews



これが,この本の主題である。4人の評者は,イギリスとアイルランドにある289コースを取り上げ,それぞれを0から10で採点している。トム・ドォークが指摘しているように,その半分以上のコースについては,共著者たちはドォークとは異なる採点をしている。いずれにしろ,ディベートはいいことだ。アイルランドに Spanish Point があり,イングランドに New Zealand があり,アイルランドに Cruit ('crutch' と発音する)があるなどと,誰が知っていただろう? 4人の採点はつねに,ドォーク,Morrissett, Nishijima, Oliver の順に並んでいる。自ら見ていないコースには採点の代わりにダッシュ(ハイフン)が記されている。

一貫性を保つため,本全体にわたってトム・ドォークの語り口によって記述がされている。それは穏やかでありながら直接的なものであり,考えを表現するにあたって容赦はない。ドォークは自らの,そして他社の設計作品を批評するにあたり,何年も費やしてきた。この本は,この思考過程とビジョンを反映している。公平のために言えば,評価の低いコースに対してもいくばくかの称賛があり,一方で,最高級の評価のコース(4人とも満点をつけたただひとつのコースを含む)も批評からは逃れていない。これらの真摯な評価は,王者ですらも素通りをさせない:
二クラウスのウェブサイトは,「Gleneagles の PGA Centenary コースはこれまで設計をてがけるよう持ち込まれた中で,最上級の素材だった」という彼の言葉を紹介している。それが本当だったら,その結果は驚くほどの落胆だ。その醜いコンクリートのカートパスが,2014年のライダーカップで世界中の目にさらされるだろう。
Ganton Golf Club  に対する評価は,それが何であって何ではないかを晴らすことに取り組んでいる。ゴルフに対する愛をためすための場所をさがすすべてのゴルファーには,このような紹介は大いに役立つだろう:
Ganton は,そのロケーションとジャンルから,長年にわたって見過ごされてきたコースだ。リンクスでもなければヒースランドコースでもなく,そしてこれを「パークランドコース」と称することは,正当ではない。リンクスではないために大きな大会は開催されず,イギリスゴルフの中心からは外されている。
Confidential Guide の説明によれば,このコースにあるのは,深くて適切に配置されたバンカーであり,メモラブルなパー4ホールの数々である。非難にしろ称賛にしろ,この本を通じて率直な言葉が連なっている。

The Gazetteer


オリジナルの Golf Magazine Top 100  リストに関係を持つトム・ドォークではあるが,他者の作品を評するにあたって,彼はこの方法を好まなかった。
「“リストは過去30年にわたって,ゴルフコースに対してひどい仕打ちをしてきた。ランキングが業界の注目を集めるようになったが,ゴルフコース設計の慣習をゆがめていった」
ドォークやその他の現在の設計家の懸念は,雑誌のひとつのランキングに名を連ねるためにはオーナーやメンバーシップを必要としていることに関連している。それを本末転倒と見るかどうか,それは知識の習得よりも成績を気にする学生のケースのようにシンプルだ。

The Gazetteer は,それゆえ,ランキングなしの一覧表であり,クラブハウスやランチなども評価している。また,オンサイトのドーミーや近隣のリゾートを含む宿泊施設や,コースコンディション(自然のあるいは人の手を介したもの)も含まれる。もっとも多くの分類のカテゴリーを与えられるのはコース自身で,「もっともうねっているフェアウェイ」や「芸術的なルーティング」「ベストなバンカー名」などがある。

さらには,「もっとも動物に出くわす可能性が高い10のコース」などもある。

Most Wanted


もっとも,このガイドは世界中すべてのゴルフコースをカバーしているように見える(あるいは作られている)が,実際にはそうではない。各コントリビューターがそれぞれに 憧れを持ち,その隠された欲望を明かしている。もっとも驚きなのは,トム・ドォークがウェールズのライダーカップコースである Celtic Manor を見たいと思っているということであり,Ran Morrissett がドォークのスコットランドでの唯一の作品(the Renaissance Club)やセントアンドリュースの New Course (たった120年前に作られた)を見ていないということであり, Darius Oliver がスコットランドの Outer Hebrides にいつか行きたいと望んでいる。

これは,この巻の中でがっかりする部分かもしれない。あなたがUKとアイルランドに旅したことがある(あるいは住んでいる)としたら,このグループがいかに博識で(あるいはいかに上手くプレーし,あるいはいかに上手く旅をしたか)にすぐに気付くことになるだろう。彼らは歩き回った。これに落ち込んではいけない。彼らの経験を通じて多くのコースを味わい,自分がよくプレーするコースの特徴をこの本で語られているものと結び付けよう。もしかしたら,地元のコースが  Royal Dornoch とつながりを持っているかもしれないし(Mark Twain golf course in Elmira, New York のように), Gourmet’s Choice に載っているコースの設計者があなたのホームクラブの設計をしたかもしれない。USのクラブに比べてイギリスやアイルランドのクラブはビジターも受け入れているので,この本はあなたの旅ごころを刺激するだろう。


最後に


ゴルフコースとその設計に対する純粋で率直な意見を読むのは,ナイスなことだ(目障りに思う人もいるだろうが)。トム・ドォークは議論を求めているわけではないが,しかし率直な語りの噴出をためらいもしない。オリジナルの Confidential Guide でジャック・二クラウスの設計に辛辣な意見を浴びせたあと,ドォークと二クラウスはともに Sebonack (2013年の全米女子オープン開催地)に取り組んだ。ある人にとっては皮肉めいた面白さがあっただろう。その結果は,お互いが相手の設計家から何かをつかみ,それまでは気付かなかった何かを持ち帰った。

この新しい Confidential Guide の第1巻では,ドォークはライバルである David Kidd の Castle Course at St. Andrews にゼロのスケールを与えている。その理由を理解するのは難しいが,彼はそのスコットランド人設計家にシンパシーを表明しながら,同時に数字上ではこき下ろしている。新しいConfidential Guide の第1巻がリリースされてすぐあと,Bandon Dunes と Cabot Links の Mike Keiser は,(ドォークではなく)Kidd が Sand Valley in Wisconsin の2番目のコースを設計することを表明した。

確かに,The Confidential Guide To Golf Courses, Volume 1 における著者たちの評価は,業界内の他の設計家の多くを喜ばせないし満足させないだろう。ASCGA(American Society of Golf Course Architects)は,ソサイエティのメンバーは他の会員の作品や方法を批評してはいけないとしている。トム・ドォークは ASCGA に加わっていないため,自由に意見を表明できる。それに反対できるし反対することもあろうが,自分の立ち位置を実証するよう準備しておこう。この対話やディベートから立ち去ることを選ぶとしたら,この本のポイントを見失うことになる。

その原則や愛好家が行なうとの同じようにゴルフコース設計に気を配ることは,世界の大半のゴルファーとっては荷が重いだろう。愛好家のゴルフコースに対する熱がどれぐらいのものか,それを知りたければ,Golf Club Atlas のウェブサイトを訪れてみるとよいだろう。ドォークはこのサイトのディスカッショングループに定期的に参加している。ひとりのゴルフコース設計家が,かれの設計したコースをお金を払ってプレーしたいと思っている人びとと,オンラインでやりとりをしているのだ。

Confidential Guide To Golf Courses シリーズ全体の情報や購入については,Renaissance Golf のウェブサイトを参照のこと。

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