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本 // Mark McClusky "Faster, Higher, Stronger: How Sports Science Is Creating a New Generation of Superathletes--and What We Can Learn from Them" // スポーツサイエンスはいかにスポーツの進化に貢献しているか。そしてタイトリスト Pro V1 の話も

この本のテーマは,その副題にあるとおり,「いかにスポーツ科学はスーパーアスリートの新時代を創りだし,われわれはそこから何を学べるか」ということで,決してゴルフについてだけ書かれているわけではありません。

そもそもこの本を知るきっかけになったのは,Golf Digest の "How the Titleist Pro V1 revolutionized golf" という記事でした。そこにあるように,この本はゴルフにおける技術の進化,中でもタイトリストのボール Pro V1 について書いている部分があり,それもあって読んでみました。

「スポーツ科学」とひとくちに言っても,この本がカバーしている分野は多岐に渡り,運動生理学やバイオメカニクスはもちろんのこと,Pro V1 のような道具・器具の進化,あるはいわゆる「マネーボール」のようなデータサイエンスと,それを発展させたかたちのバスケットボールにおけるデータ分析とその表現方法,ドーピングの効能とそれに対するアスリートたちの考え方,効率的な練習方法および練習時間とその競技での成功との関係,メンタルとフィジカルとの関係,「生まれと育ち」がアスリートとしての成功に与える影響などなど,その射程はものすごく広いです。そして同時に,カバーされる競技の数も非常に多く,どこを読んでも新たな知見が得られました。

下には引用していないですが(なぜかメモしわすれた),記憶に残っている中で面白いエピソードがひとつありまして,ロンドンオリンピックに向けてイギリス国内で強化策がとられたが,そのときにボート競技の候補者を集めるべく出された新聞広告が,「スポーツの経験があって身長がいくら以上の人は応募してきてくれ」というものだったと。つまり,ボート競技では身長のある人間が圧倒的に有利だという統計データがあり,それにもとづいて人を集めて強化策を行なったと。結果的にイギリスはボート競技で金メダルを含む複数のメダルを獲得したわけで,スポーツ科学というのは最新鋭の解析器具を使うものだけでなく,こういったものも射程に入るものかと思いました。



  • 「自分のライバルより早く学べる能力は,競争上の優位性を保つ唯一の道かもしれない」
  • すべてのアスリートが依って立つ3つの基礎がある。すなわち,強さ(strength),速さ(speed),そして耐久性(endurance)。
  • もし75分未満のエクササイズをするのであれば,炭水化物の摂取はパフォーマンスの最適化にとってまったく必要ではないかもしれない。
  • USオリンピック委員会のウェブサイトでは,スポーツ栄養学者 Nancy Clark によるスポーツドリンクのレシピが公開されている。1/4カップの砂糖と小さじ1/4の塩,それを1/4カップのお湯で割る。そこに1/4カップのオレンジジュース,大さじ2杯のレモンジュース,そして3と1/2カップの水を加える。これで,市販されているスポーツドリンクと基本的には同じ栄養素を持つドリンクが作れる。
  • エリートアスリートは,1時間あたり90グラムの炭水化物を摂取することが推奨される。
  • カフェインは,幅広い種類のアスリートにとって,効果的な物質である。
  • カフェインの興味深い点のひとつは,カフェインがなぜ,そしてどのようなかたちで効果的であるのか,誰も完全には分かっていないことである。
  • 重炭酸ナトリウム(重曹)は,運動生理学者が「細胞外のバッファー」と呼ぶ働きをする。
  • 一般的に,休息している人間の血液のpHは約7.4で,人間の筋肉のpHは通常は7.0。運動をするにつれて,血液のpHは7.1にまで落ち,そして筋肉では6.8にまで落ちる。
  • 重曹は血液のpHを上げ,それによって筋肉から水素イオンをより素早く取り除くことができる。
  • カリフォルニアにある Sparta Performance Science の Phil Wagner とそのチームは,プロアスリートに対してただふたつだけのことをアドバイスしている。筋肉量を増やすために体重1ポンドあたり1グラムのプロテインを毎日摂取すること,そして少なくとも拳8個分の量の野菜を毎日食べること,である。
  • 研究結果によれば,年度の上半期で産まれた子供は年度の後半に産まれた子供よりも成功をおさめる傾向にあり,これはサッカー,バスケットボール,クリケット,そしてテニスを含む多くのスポーツに当てはまる。
  • 「自分より大きな子供,年上の子供,ときには大人たちとプレーする機会が増えるにつれて,アスリートとしての能力が上がる」
  • 1977年以降に産まれた155のNBAプレーヤーを調査した結果,その大多数は,人種や民族に関係なく,中流ないし上流の収入クラスの出身である。
  • カイマーは2010年に全米プロ選手権で優勝し,2011年には世界ゴルフランキングでトップに立った。しかしカイマーはマスターズを狙うために,ドローをコンスタントに打てるようスイングを改造する。しかしそれゆえ彼は持ち球であるフェードをコンスタント打てなくなった。元のスイングを取り戻すまでには2年がかかった。
  • アメリカではバレーボールは女性にとって非常に人気のあるスポーツで,競技人口は,陸上競技,バスケットボールについで3番目。しかしオリンピックでアメリカ女子が金メダルを獲得したことはない。しかしアメリカ男子は,競技人口が少ないのにもかかわらず,金メダル3つ,銅メダルを1つ獲得している。その鍵となる要素のひとつは,指導方法と練習方法にある。
  • チームは「Bad Pass Friday」と呼ばれる練習を始めた。通常,プレーヤーがシュートの練習をするとき,コーチはプレーヤーがキャッチしやすいような優しいパスをする。しかし試合では,常にディフェンダーがシュートをさせまいとしてくるので,シュート前に完璧なパスを受けられることはまずない。そこで「Bad Pass Friday」では,キャッチできるけれども簡単にはキャッチできないようなパスを,コーチが出す。
  • 競技の低いレベルにおいては,単に強い肉体を持っていることがアドバンテージになる。非常に高いレベルであっても,例えば60から65メートルほどのハンマー投げでも,スクワットなどのエクササイズとハンマー投げとの結果にはある程度の相関関係がある。しかし,世界レベルで勝つレベル(ハンマー投げなら75から80メートル)になると,そのような相関関係はなくなる。
  • フットサルはサッカーの本質的なスキルを小さなハコに凝縮している。プレーヤーは,アウトドアでのサッカーに比べ,600%以上もより多くボールに触れ,すばやくスキルを身につけられる。ロナウド,ロナウジーニョ,ネイマール,ペレ,メッシ,クリチアーノ・ロナウド,シャビ,彼らはみなフットサルを経験している。
  • プロゴルファーの平均飛距離の伸びは,転換点が三度あった。メタルウッドの登場,タイトリストPro V1の登場,そして大型ドライバーの登場だ。
  • Pro V1がトーナメントで使用された2000年10月,47のプレーヤーがボールをV1に変えた。これほどの大きな変化は,ゴルフの歴史では前代未聞だった。
  • 2000年のマスターズでは,95人中59のプレーヤーが傷のついたゴルフボールを使っていたが,1年後にはそれがたった4人になった。
  • マスターズが最初に開催された1934年,オーガスタのトータルヤーデージは6700yd。2001年には6985ydになり,こんにちでは7435ydとなっている。
  • セントアンドリュースのオールドコースもまた,この飛距離の伸びに対抗すべく,リノベーションを実施している。
  • ゴルファーの平均ハンディキャップは1991年に約16.3だったが,2012年までに14.3までにしか落ちていない。その間,プロの平均飛距離は30ヤードも伸びているが,多くのアマチュアはその恩恵に浴していない。
  • サイクリストに行なった研究によると,炭水化物を混ぜた水で口をゆすいだグループは,水で口をゆすいだグループに比べてパフォーマンスが2.9%向上した。
  • 「できるだけ速く」走ったつもりのサイクリストが,その過去の自分と競争すると,スピードが1%向上した。
  • 精神的な疲れが,肉体的な疲れにも影響する。
  • 回復(recovery)とは,20年前の炭水化物のようなものだ。つまり,それがどのように働くかについては十分に分かっているのだが,そこに含まれる正確なメカニズムについてはほんのわずかしか分かっていない。
  • 2011年に韓国で開催された世界陸上に出場するアスリートたちに,時差ボケへの対処方法が伝授された。多くのフライトはアメリカ西海岸を午前遅くに発ち,韓国には次の日の午後半ばに着く。機内で起き続けていることで,夜を伸ばすことができ,正しい睡眠のスケジュールをすばやく取り戻すことができる。
  • 15年間のNFLのデータによると,片道2000マイル以上を旅したチームのアウェイでの勝率は.398,1000マイル以上2000マイル未満では.403。
  • ゴルフやランニング,トライアスロンやサイクリングのように,朝早く開催されるスポーツがある。これらに惹かれる人びとは,もともと朝型人間だからだ,という可能性もある。
  • 痛みに関する現在の考え方は,個々の痛みに関する閾値は比較的安定しているけれど,その耐性,つまり自ら感じる痛みにどれぐらい対応できるかは,訓練ができて向上させることができる。
  • 運動の前にイブプロフェンを摂取することは,パフォーマンスの向上には役立たない。
  • 野球を理解するということは,その多くはパーセンテージと確率を理解するということだ。バスケットボールを理解するということは,それらの要素に加えて,空間についての理解も含まれる。
  • Goldsberryが2013年のSloan conferenceで行なったプレゼンテーションは,ときのLAレイカーズのセンター Dwight Howard にちなんで "The Dwight Effect" と名付けられた。その発表の会場は,同業の研究者のみならず,NBAのエグゼクティブたちでいっぱいになった。
  • SFジャイアンツのピッチャー,ティム・リンスカムは,2012年,そのキャリアで初めて苦しみ始めた。しかし,Sportvisionチームはそれに衝撃を受けなかった。「われわれのシステムは,彼のメカニクスの違いをほぼ即座に認識した。彼のリリースポイントはかつてのポイントと異なっていた。それはあまりに大きな違いだったのので,われわれのカメラの設置がずれたのではないかと訝ったものだ。
  • 「エントリーしたすべての大会で優勝できるが,5年後には死に至るようなドラッグがあったとして,あなたはそれを摂取するか?」という質問に対して,半数以上のアスリートがイエスと回答した。
  • 女性はテストステロンやその他のアンドロゲンを持っていないので,これらのアンドロゲン効果を持つドラッグは非常に大きなパフォーマンスの向上をもたらす。
  • 高度に関わらず,大気中の酸素の割合は21パーセントである。しかし,高地に行けば行くほど気圧が下がるので,一定の体積に占める酸素の分子数は減ることになる。高度7000フィートでは,海抜ゼロ地点に比べて気圧は22パーセント減少するので,つまりいち呼吸あたりの酸素の摂取量は22パーセント減ることになる。
  • 1935年の "Amateur Athlete" 誌の中で,Brutus Hamilton は,更新不可能なふたつの「完璧な」世界記録について言及した。ひとつは400メートル走の46.2秒であり,もうひとつは砲丸投げの57フィート1インチである。こんにち,400メートル走の世界記録は43.18秒であり,砲丸投げは75フィート10.25インチである。
  • 1896年4月10日,最初のオリンピックの優勝者のタイムは2時間58分50秒だった。それから112年後の北京で,ケニアのサミュエル・ワンジルの優勝タイムは2時間6分32秒。112年前より2キロ以上長い距離を,29パーセント早く走ったことになる。
  • とある物理モデルを使うと,走り幅跳びの記録を予測することができる。ウサイン・ボルトのトップスピードを入力すると,10.50メートルというとてつもない数字が吐き出される。踏み切りの効率を半分にしてモデル化しても,9.46メートルという,現在の世界記録(8.95m)をゆうに越える数値が出る。
  • 東京での世界陸上(1991年)より前に,走り幅跳びで29フィートを越えて飛んだのはふたりしかいなかった。カール・ルイスとマイク・パウエルは,それを1時間以内に達成した。
  • われわれはコンタクトスポーツを暴力的だとみなしているが,しかしすべてのスポーツの中で最も暴力的な動作とは,野球でピッチャーがボールを投げるときの腕の加速である。
  • 野球における怪我の専門家である Will Carroll が2013年に発表したところによると,メジャリーグ登録選手のうち124のピッチャーが,治療を受けていた。
  • 1970年台の三冠レース以降,競走馬のスピードは速くなっていない。
  • レッドブルのオフィスに行くと,水のかわりにレッドブルが提供される。

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